ベンツ

俺の人生は平凡だった。見た目も平凡、すべてが平凡。RPGで言えば、冴えない村人Aという感じの立ち位置だろう。

特にモテるわけでもなく、かといって極端にモテないわけでもない。ただ、彼女という存在とは大学卒業後しばらく縁がなかった。

そんな俺の人生が変わったのは、ある日、叔父から「ベンツ」を譲り受けたことがきっかけだった。

叔父は仕事の関係で海外に行くことになり、長年乗っていた黒のメルセデス・ベンツを俺にくれると言い出した。最初は戸惑ったが、タダでもらえるものならと喜んで受け取った。

それからというもの、俺の周りの空気が変わった。まず、職場の同僚の見る目が変わった。「お前、ベンツなんて乗ってるのか? すげぇな」とか「やっぱりベンツって違うよな」とか。飲み会でも妙にちやほやされるようになった。

記事は下に続きます。





女の反応が…

チアガール

しかし、本当に驚いたのは女性たちの反応だった。

ある日、仕事帰りにカフェでコーヒーを買った帰り、駐車場で車に乗ろうとしたときだった。「すみません、もしかしてこの車のオーナーさんですか?」と声をかけられた。振り返ると、そこには綺麗な女性が立っていた。

「え、あ、はい。そうですけど……」

「すごいですね! 実は私、車が大好きで……」

そこから話が弾み、気がつけば連絡先を交換していた。彼女は紗希(さき)という名前で、仕事で高級車の広告関係の仕事をしているらしかった。ベンツの話をきっかけに、俺たちは自然と距離を縮めることになった。

合コンでも

合コン

さらに、友人の紹介で参加した合コンでも、俺がベンツに乗っているという話をすると、女性陣の食いつきが違った。「え、ちょっと乗せて!」と興奮気味に言われ、後日少しドライブすることになった。助手席に乗った女性は女子大生の華(はな)。合コン当日も隣に座る機会があり、うまく誘い出せた。

華(はな)はロングヘアの女性だった。「高級車って緊張するけど、やっぱり乗り心地が全然違うね!」と目を輝かせている。

そのうち、「この車って、どのくらいスピード出せるの?」という無邪気な質問が飛んできた。もちろん安全運転第一だが、少しアクセルを踏んでスムーズな加速を体感させると、隣から「きゃーっ!」と歓声が上がった。

車で人生が変わるもんか!

ベンツ

正直、こんなにも車一つで人生が変わるとは思ってもみなかった。もちろん、ベンツがすべてではないが、少なくとも自分に自信を持つきっかけにはなった。

そして、数ヶ月後。

「ねぇ、今度の週末、一緒にドライブ行かない?」

電話の向こうで微笑む紗希の声が聞こえた。

俺は今、幸せの中にいる——それも、ベンツに乗ったおかげで。

そろそろ彼女の乗り心地も試したい。